メランコリック
「信じろって言ったのにな」


俺は恨みがましく響くよう口にする。汐里の細い声が答えた。


「あの時の私じゃ、ダメだった。……あのあとすぐ、父に会いに行ったの」


思わぬ告白に、俺は汐里の方を見た。
汐里は正面の遊歩道を見据えたまま歩き続けている。
散歩の体を続けながら、俺は汐里の言葉の続きを待つ。


「父は先々月に亡くなった。でも、その前に会いに行ってきちんと文句は言えたんだ。母も来てくれて、両親にきちんと言いたいことを話してきた。すごい、重いの。24年分の恨み節」


「それは壮絶だっただろうな」


「うん。両親には怖かったと思うよ。凝り固まった怒りと恨みだったからね。でも、二人とも受け止めてくれた」


それで、汐里はこんなにさっぱりした顔をしているのか。
もともと悪くない顔立ちは活発で明るく見え、表情に虚ろなところはない。
まるで憑き物が落ちたように、彼女は軽やかに進む。
< 200 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop