メランコリック
「おまえが元気に仕事できてるならいいけどさ。夜勤はキツいんじゃねーのかなーって」


「夜勤はまだ減らしてもらってるよ。通院先が職場だから、その辺融通が利くんだ」


駿吾の心配そうな声に、私は殊更元気に答える。

私の病気がわかって、大変だったのは周りの方だ。
駿吾は私が病院で倒れたと知った時から、休みは毎回私の地元に通い、私の通院にも付き添い、献身的に見守ってくれた。

同僚たちにはだいぶ冷やかされたっけ。
『藤枝さんの彼氏は優しくてイケメンだ』って。

そして、これを機に駿吾はすっかり私の祖父母と顔なじみになってしまった。
祖母は今でもしょっちゅう言う。
『駿吾くんが心配するから無理するんじゃないのよ』

家族公認になったのは、なんだか気恥ずかしい。


「見て、あそこ」


私は木製のフェンスに片手をつき、もう一方の手で水面を指さす。
示す先には白くて体長が30センチくらいの鳥。羽を広げればもっと大きいだろうけど。


「コサギだ」
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