ほろ苦いキミのkiss【壁ドン企画】
何とか足を進め戻ってきた給湯室。
あんなに一人ひとりの好みを思い出して慎重に淹れていたさっきとは大違いだ。
頭の中は、櫻木さんのことばかり。
ブラックコーヒーを淹れるだけなのに、なかなか手が進まない。
やっとコーヒーを淹れ、少し冷ますうちにオフィスに戻り、資料を取りに行った。
「菊池さん、ひどく疲れた顔してるけど、大丈夫?」
「う、うん……ちょっとまたドジしちゃって」
動揺は隠すことができただろうか。
「ふふふ、そっか。菊池さんらしい。その資料取りに来たってことはこれから櫻木さんのところ?頑張って、菊池さん」
「ありがとう」
西澤さんの口から“櫻木さん”の名前が出て、反応してしまう私。
西澤さんには話すことはできない。
額にではあるものの、キスをされたなんて口が滑ってでも無理だ。
思い出すだけで、体に熱を帯びてしまう私は、気づかぬうちに自分が思っていた以上に想いを寄せていたのかもしれない。