ほろ苦いキミのkiss【壁ドン企画】
上から私を見下ろしていたのは、紛れもない……
私の指導係だ。
回してしまっていた腕は離したものの、櫻木さんの大きな手を壁につき、その腕で道を塞がれてしまっては、逃げることは許されない。
近すぎて全体は見ることができないが、真っ白な櫻木さんのワイシャツはコーヒーがかかり、コーヒー色に染まっている。
またやってしまった。
というのも、櫻木さんに誤ってコーヒーをかけてしまったのは、これで二回目。
「す、すみません…」
謝るにもこの状況では、言葉が上手く話せない。
閉ざしたこの想いも、抑えることはできない。
目の前の櫻木さんに伝わってしまうんじゃないかというくらい、心臓がドクンドクンと暴れている。
あの櫻木さんでも、今回ばかりは怒られるそう思った。
普段、優しすぎるくらいお人好しな櫻木さんは前回少しも怒ることはなく、「大丈夫?」そう聞いてきた。
被害を受けたのは櫻木さんなのに。
さすがに今回は二回目。この前と同じ、そんなことはない。
拳を握って身構えた。