ほろ苦いキミのkiss【壁ドン企画】
「大丈夫?火傷してない?」
「えっ…」
同じだった。
櫻木さんは全く怒らない。
「櫻木さん、こそ……」
私は全然平気だ。
猫舌な櫻木さんのための温めのコーヒーでは火傷はしない。
むしろ、密着している体が熱を帯びて熱い。
この熱から逃れるために、空いている両手でがっしりとした櫻木さんの胸板を押した。
それでも櫻木さんはびくともしない。
それどころか近づいてきたのは櫻木さんの整った顔。
「やっぱり、菊池さんっておっちょこちょいだね?」
私の耳元で、甘く囁いた。
あまりの甘い声に、私は溶けてしまいそうだ。
ほんのり香るほろ苦いコーヒーの匂いと櫻木さんの匂い。
染まっていく赤い顔を逸らすように下を向く。
バレてはいけない。想いを出してはいけない。
この顔を見られてはいけない。
それも無駄だった。
空いていたもう一つの櫻木さんの手が私の顎に添えられる。
いとも簡単にクイッと顔をあげられ、櫻木さんの視線と絡まる。
戸惑う私を見た櫻木さんは微笑んで、私の額に柔らかいものを優しく押し付けた。