「私は貴方のモノ」【完結】
「それでさー。昨日のカオリちゃんって子がな」
「あー、カオリってすぐに股開くって有名ですよ」
「え。嘘でしょ」
「まじですよ。まさか、手を出したんですか」
「……あ、は」
「見境なさすぎですよ、タケル先輩」
「うっせー」
「少しは彬先輩を見習って下さい」
「彬だってイケイケだっつうの!なあ!彬!」
助手席から顔を覗かせるタケルに、思いっ切り眉を顰めながら一言。
「黙れ」
「もうっ!冷たいんだから」
「気持ち悪いです、タケル先輩」
運転席と助手席で繰り広げられるコントみたいな会話を、俺は無視して目を閉じた。
それから俺が家に到着するまで、目を開ける事はなかった。
「また行くわ。これタク代」
「いらねえっつうのに」
「8まで歩いて戻るのかよ?」
「いや、そうだけど」
「ごちゃごちゃうっさいから」
無理矢理、タケルに握らせると俺は鍵を受け取ってマンションのエントラスに向かった。
「またなー彬!」
手だけ上げると、俺は返事をせずにエレベーターに乗り込む。
それから、自分の部屋の前に立つと鍵を鍵穴に差し込んだ。