「私は貴方のモノ」【完結】
全身を洗ってから浴室を出た俺は、まだぽたぽたと雫が垂れる髪の毛を放置して、タエのいるリビングへと向かう。
化粧をしていたタエは、一度俺を見るとすぐに顔を背ける。
……何で背けたんだ?
よくわからずに、不満気な顔でタエに近付くと鏡越しに頬を染めたタエの顔が目に入った。
風呂上がりに欲情したわけ?
そんなタエを見てゆるゆると口角が上がって行く。
後ろから、タエの体を抱きすくめるとわざと耳元で囁く。
「なーに顔背けてんの?」
「そんな、事っ」
「ふーん?」
真っ赤な顔で弁解したって、説得力ないんだけど?
首元に顔を埋めようと思った時だ。
俺の視線がタエの洋服で止まった。
……、これ。
それはなんて事ない、ワンピースだった。
カジュアルなワンピースで、袖にひらひらしたヤツがついてるけど。
色気なんてものは全くない。
だけど、これは俺が初めてタエをあのライブ会場で見た時に着てた洋服だった。
様々な感情が渦巻いた、あの日。
タエをめちゃくちゃにしたいと思った、あの日。