結婚記念日
何・・・?訳が解らないまま、陽平を見上げる。

すると、私の耳元に、彼が口を寄せる。

「そんな怖い顔してたら、せっかくの可愛い顔が台無し」

そう低い声で囁くと、私から少しだけ顔を離し、切れ長の瞳を細めた。

何、言ってるの・・・?あまりの驚きに、息を止め、目を見開いたまま、彼を見つめる。

堪えていた涙が、一筋、頬を伝う。

「しまった!」と思う間もなく、陽平が、舌先で私の涙を舐めとる。

「また、泣くの我慢してた?泣いたり、怒ったり、笑ったり・・・何年経っても、沙映は見てて飽きない」

そう言って、クスッと笑った。

何が起こってるの?私の目の前のこの人は、本当に『塚本 陽平』なのだろうか?私は、こんな陽平は知らない。

身体中の熱が、一気に顔に集まる。きっと、耳まで真っ赤になっているはず。

いつもは「お酒臭~い!」と、顔を背ける彼の吐息が、今はなんだか甘く感じる。その甘い吐息に、私まで酔ってしまいそう。

心臓の鼓動は、どんどん速くなる。この前娘達と、本気のかけっこをした時より、速くなってる。

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