結婚記念日
オジサンになって忘れていたけど、若かりし頃、陽平はそこそこモテていた。背が高く、目鼻立ちも、まあまあ整っている。

私が知らないと思っている所で、何度か女の子に告白されていた。

穏やかで、周りに気遣いができる陽平は、老若男女問わず、好かれていた。

まぁ、それは、彼の一面にしか過ぎないのだけれど・・・

私が知らないだけで、こういう事、これまでもしていたの?

私を、どうしたいの?というより、私、どうなっちゃうの?

涙が溢れそうになる瞳で、私は、ただじっと陽平を見つめた。

不意に陽平が、壁から手を離す。間近にあった顔も離れていく。

陽平の甘い吐息から解放されて、小さく息を付く。

片手を顎にあてると

「これが『壁ドン』か・・・」

と、いつもの口調で、陽平が呟いた。

我にかえった私は、慌てて俯く。

「どうだった?やってみて」

できるだけ、平静を装ってみる。

「うん、使えそう」

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