真夜中のパレード

その日の夜、
上条は天音と最初に約束をした時と
同じ時計塔の下に呼び出した。


少し待つと、
すぐに天音があらわれた。


彼女は相変わらず美しく、

街灯の光を受けると
そこだけきらきら光っているようで、

思わず見とれてしまった。



「何だかお久しぶりですね、
直樹さん」


天音の声を聞くと上条は急に泣きたい気分になり、
くしゃりと眉を下げて笑った。




「本当に、
ずいぶん長い間会ってなかった気がしますね」


天音はいつものように嬉しそうに笑い、
上条の手を握った。


「最初の待ち合わせと比べると、
ずいぶん夜も過ごしやすくなりましたよね」


「えぇ、もう四月になりますからね」


天音も楽しそうに言葉を続ける。


「春は好きです。
一年で一番好きかもしれません」


そう言って、
そっと上条の手を握った。

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