真夜中のパレード


そこで彼女達は透子の顔を見て、動きを止めた。


三人は、口をポカンと開けて
持っていたお菓子を机に落とした。


いつも眠そうな顔で
置物みたいに座っている部長も、
透子を見つけた瞬間目を見開いて固まった。


男性社員の堀田と渡部も、フロアの空気がおかしいのに
気づいて原因を突き止めた瞬間、
ぴくりとも動かなくなった。


他の部署の社員も、
透子を見た瞬間にみな彼女に視線を奪われて動きを止めた。



そして、コピーしたばかりの書類を
抱えた上条も、
部屋に入った途端異様な空気に眉をひそめる。


「おはようございま……」


途中まで言いかけて、
部屋に一歩足を踏み入れた所でかたまった。


一見落ち着いているようだけど、
手に持っていた書類が滑り、はらはらと床に落ちていった。


その様子が目に入り、
透子は思わず小さく微笑んだ。


彼女が笑うと、
急に場の空気が華やかな物になる。

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