『本気の恋愛』始めましょ
 そんな真剣さの孕んだ声に上を向くと、真剣な瞳がそこにあり、ドキッとしてしまう。こんな計都の顔を見たことはなかった。いつも優しく冗談ばかり言って私をからかう計都の姿はそこにはなくて…そこにいるのは見たことのない男の顔をした計都だった。

 その迫力に気圧された私は一歩下がると、計都が一歩詰める。


 一歩下がると一歩詰める。そして、私の背中に冷たく平たい壁に当たる。シャツ越しに感じる壁の冷たさがもう後ろに逃げることが出来ないと教えてくれる。見上げると、さっき以上に真剣な顔をした計都がいて…。心臓が嫌な音を立てる。

『ドンッ』


 そんな大きな音が私の耳元でしたかと思うと、計都の両手は壁に突かれ、私の身体は逃げられないように計都の腕の中。

 右を見ても左に見ても計都の腕がある。そして、計都の香りに包まれる。名前の知らない計都の愛用の香りが鼻腔を擽る。そして、その香りは次第に色を増していく。
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