もう一度、あなたと…
「なんか悪い夢でも見たんじゃないのか⁉︎ エリカは今26。オレと同い年だよ!」

頑として言い張る「たからがひかる」の顔を見る。
真剣な眼差しを見ていると、確かにそんな気もしてくる。
でもーーー

「…じゃあ、いつから付き合ってたの⁉︎ …そもそも、なんでいきなり結婚式なの⁉︎ 」

頭の中が混乱してる。これが夢じゃなければ、これまでが夢ってことになる。
何が何だか分からない。こんな状態のまま結婚式なんて、一体誰が信じられるだろう。

「付き合いだしたのは、入社3年目の春。会社の花見会の後からだよ。お前が酒に酔っ払って、ベロンベロンになってた所をオレが介抱して…そこが始まり。それから1年間じっくり愛を育んできて、今がある!」

いかにも正論のように言うけど、肝心な所すっ飛ばしてない⁉︎

「あ…愛を育んでって…具体的に何があったの⁉︎ 私とあなたの間に…」

疑ってる訳じゃない。これが本当のことなら、これ以上に幸せなことは多分ない。でも、心が叫んでる。
これは変だ…。どう考えても普通じゃない…って。

「エリカ…やっぱお前変だよ…。オレが結婚してくれって言った日、あんな大泣きしたのに…覚えてないのか⁉︎ 」

近寄るから後ずさる。ドレスの裾を踏みつけて、ひっくり返りそうになった。

「…お、覚えてないのかって…そもそも自分がなんでここにいるのかだってサッパリ思い出せないのに、結婚式だなんて言われても、頭の中ゴチャゴチャして意味分からないし…!」

喋ってるうちにますます混乱がひどくなる。
取り乱して泣き出しそうになる私のことを、「たからがひかる」が抱きしめた。
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