もう一度、あなたと…
Act.13 巡る季節…
太一との時間は穏やかに流れだした。
これまで通り、離れ離れなのは変わらないけど、以前よりも彼が近くにいるように感じた。

あのデートの日の帰り、ひかるは謝りながら真実を教えてくれた。

「…ホテルにいた日、ホントは道端でエリカさんが急に吐き出して。服は汚れるし、ゲロは被るしで困り果てて…急いでキレイになりたくてラブホに入ったら、そのまま寝込んでしまって…」

朝になって気づくと、私の姿はナシ。事実を教えようにも何だか避けられてる。

「だから、ちょっとからかうつもりでウソ言ったら、エリカさんが本気にしちゃって。しまったな…って、逆に罪悪感湧いてきて……」

罪滅ぼしのつもりでデートに誘った。
場所を教えられたのは事実だけど、だから誘ったのではない…と付け加えられた。

「真面目に謝るエリカさん見てたら、可愛いなと思って。一緒に過ごしてみたら、どんな人か、もっと分かるかなと思ったから……」


…それ以来、ひかるとは時々会ってる。
太一との二股をかけるようで、最初は少し嫌だったけど…。

「それでもいいから、時々会ってくれると有難い…」

気に入られるような事はしていない。
ただ、共に過ごす時間は楽しくて、あの夢の続きを見てる気がして、手放したくなくなったーーー。




「…やり直さないか…」

あの電話から3ヶ月過ぎた日、太一からもう一度プロポーズされた。新しく用意された指輪には、青い石が乗っていた。

「俺は、エリカに何もしてやれなかった。…これからも、子供だけは授けてやれない。でも、その分、お前に愛情を注ぐし、前みたいに寂しい想いはさせないようにする!だから…一緒に暮らして欲しい」

太一なりにいろいろ考えてくれた…と思った。
指輪を見せられて、心が揺れ動いたのも確かだった。
でも……

「…ごめん。少し考えさせて…」


……心の中にひかるの存在があって、すぐには答えられなかった。
彼とは夢の中だけのつもりでいたのに、会えば会う程、あの続きが叶えたくて仕方なかった。

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