四百年の恋
 「ヒメ?」


 聞き返した、その瞬間。


 「あ!」


 急に巻き上がった風が、桜の花びらを舞い散らせ。


 真姫の視界を遮った。


 「あれ……?」


 風が止んだ後、目を開くと。


 そこには誰もいなかった。


 ただ満月に照らされた満開の桜が、不吉なくらい妖艶に咲き誇っていた。
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