勝手に古今和歌集
ぐんぐんと引き揚げられていく網の隙間から身を滑らせて、なんとか中に潜入することに成功した。






あぁ、もうすぐあの人に会える………!






ざぷん、と水しぶきを上げて、網が海面に出た。





わたしは網目にしがみつき、なんとか顔を出す。






「…………おっ!


でっかいのが掛かったなぁ。


………って、あれ?」






わたしの期待どおり、舟の上から網を引き揚げているのは、あのときの彼だった。





わたしと目が合うと、きょとんとした顔になる。






「………お前、あのときの人魚か?」





「ええ、そうよ!」





「なんだ、また捕まったのか。


ほとほと間抜けなやつだなぁ」






彼は呆れたように笑った。





その笑顔は、やっぱりとっても素敵だった。






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