勝手に古今和歌集
彼はなんだかひどく驚いている。





「………だめ?」






首を傾げて訊ねると、彼は少し困ったように、「だめっていうか……」と頭を掻いた。






「………お前、人魚だろ?」





「ええ、そうよ」





「じゃあ、陸に行ったら死んでしまうんじゃないか?」






どうやら彼は、わたしのことを心配してくれているらしい。





あぁ、やっぱり、なんて優しいの!






「心配しなくても平気よ!


あのね………」






わたしは両手で彼の頬をつかみ、ぶちゅっと口づけた。






「わぁーっ!?」






彼は驚いて仰け反り、そのまま海の中に落ちてしまった。




わたしは彼に続いて海に飛び込み、彼の身体をつかまえる。






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