睡恋─彩國演武─


「藍──…」


遠くで千霧の声が聞こえて、更に恐怖を増幅させる。

冷や汗が全身を濡らす。


《グキャ》


丸く光った二つの目玉が、ぐるりと藍を睨んだ。


《ゲキョ》


目が合うと、それは藍に近付こうと重い足音を響かせる。


「はっ──!」


息を呑んだ瞬間、剣が肉を斬る音と共に、緑の体液が宙を舞った。

目を丸くしてその光景を凝視していると、千霧が振り向き、手を差し出した。


「──怪我はない!?」


「うん……なんとか。正直ダメかと思ったけど」


「約束でしょう。貴方の運命は私が変える!」


迷いなく言い切る姿に、藍はちいさく笑った。


「そうか……そう、だったね」


今度は、本当の千霧の手。

手を伸ばそうとした刹那、藍の瞳孔が縮んだ。


「あ──…」


身体の中で鈍い音が鳴る。

藍の胸に、背後から水の刃が突き刺さっていた。

刃は藍の血と混じり合い、胸元で赤く揺れていた。


「な……!これ……は……」


気持ちが悪い。

力が抜けて、身体を支えられない。


「異形の術か……!藍、気を強く持って!」


千霧に支えられるが。



「う……あ゙ぁア゙あァ!」


激痛が身体を駆け巡る。

気力が絞り取られていく。

四肢が冷えて、動かない。

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