俺様上司は、極上の男!?
櫟課長が悠々と近付いてくる。

私は下がろうにも、背後にある荷物が邪魔して、これ以上逃げられない。
不自然に横に飛びのくといった恥ずかしい逃げ方はできなかった。


「ゆうべの良くなかったってんなら言えよ?俺も考えなきゃならない」


何を考えるんだか。
事後検討しなくても、充分夢中にさせてもらった。
極上の夜だった。

私はひとつ息をつき、間近に迫った彼を見上げた。


「昨夜は大変失礼しました。ご迷惑をおかけしたこと、お詫びします!」


「おお、殊勝な挨拶もできるんだな」


櫟課長は気圧されもせず、微笑んでいる。
私の方が負けそうだ。


「ゆうべのようなご迷惑は……二度とおかけしませんので……どうか」


「別に言いふらす相手なんか、いないさ。大人の事情とやらはお互い様だろ」


櫟課長が私の言葉を捉えて、答える。
一度寝たくらいで、恋人同士と言えるほど、私も彼も若くない。
それが、お互い様の大人の事情。
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