俺様上司は、極上の男!?
この会社で立身するため、千葉工場の努力を踏みにじった人間を地に這わせるために、彼はここにいる。
私なんか目に入らなくて当然だ。
オフィスは目前だった。
手前の路地に入ると課長は自販機で缶コーヒーをふたつ買った。
ひとつを私の手に放る。
「本社に異動してきて、太刀川を見ていたら、なんだか似てると思ったんだよ」
「私がですか?」
「ひとりで何でもできますって顔して、誰にも頼らず黙々と仕事をしてるとこ。女ってのはもっと周りと協調して、仲良くニコニコ仕事してるもんだと思ってた。意地っ張りで強気。おまえは嬉しくないかもしれないが、俺に似てるなって思った」
課長は茶色の綺麗な瞳をすがめた。少しだけ優しく、懐かしそうに。
「あの晩、そんなおまえが、男に裏切られたって手放しに泣くだろ?不思議な感覚だった。俺はおまえの涙に安心していたんだ。
工場を守れなかった後悔や、暗い恨みが俺の中に澱のようにたまっていた。どうしようもなく痛い部分におまえの涙が染みてきた」
私はコーヒーを両手に握りしめ、彼を見つめた。
櫟課長の横顔は端正で、語る口調はあくまで静かだった。
私なんか目に入らなくて当然だ。
オフィスは目前だった。
手前の路地に入ると課長は自販機で缶コーヒーをふたつ買った。
ひとつを私の手に放る。
「本社に異動してきて、太刀川を見ていたら、なんだか似てると思ったんだよ」
「私がですか?」
「ひとりで何でもできますって顔して、誰にも頼らず黙々と仕事をしてるとこ。女ってのはもっと周りと協調して、仲良くニコニコ仕事してるもんだと思ってた。意地っ張りで強気。おまえは嬉しくないかもしれないが、俺に似てるなって思った」
課長は茶色の綺麗な瞳をすがめた。少しだけ優しく、懐かしそうに。
「あの晩、そんなおまえが、男に裏切られたって手放しに泣くだろ?不思議な感覚だった。俺はおまえの涙に安心していたんだ。
工場を守れなかった後悔や、暗い恨みが俺の中に澱のようにたまっていた。どうしようもなく痛い部分におまえの涙が染みてきた」
私はコーヒーを両手に握りしめ、彼を見つめた。
櫟課長の横顔は端正で、語る口調はあくまで静かだった。