俺様上司は、極上の男!?
「たぶん、俺はずっと泣きたかったんだと思う。工場が無くなった時から、歯を食いしばって涙を耐えてきた。泣く資格すらないと思っていたんだ。
おまえが泣いてるのを見たら、まるで代わりに泣いてもらっているみたいに思えた。勝手だよな、こんなの。だけど、自分でも驚くほどおまえの涙に癒されていることに気付いた。
どうにか慰めたくて触れたら、止まらなくなってしまった。あたたかくて、安心で、虚しさを分けあうようで」


言葉を切って、課長は言った。


「融けるような夜だった」


私も。
私も同じでした。

あなたの優しさと強引さに、死にそうだった心と身体は融けて落ちました。

課長は私に自分を重ねていた。

だから、私を抱いたのだ。
だから、私に好意を示してくれたのだ。

それは、“恋”ではない。

悲しいけれど、もう彼も私もわかっている。


「課長」


彼の好意が同志への優しさだったとして、
だからこそ今、私には言いたいことがある。
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