俺様上司は、極上の男!?
ふわふわだった。
頭の中も視界も。

なんだ、私にしてはちょっと酔ってる。
やっぱ、精神的な理由でコンディションが悪いのかな。
単に、生理前だから?

駅までの足取りはけしてふらついていなかったけれど、足が駐車場の段差に引っ掛かる。
視界は狭まっていたようだ。

あ、と思ったら、右足のヒールが取れていた。
オーウ、なんてこったい。

お気に入りのパンプスだったんですけど。
チャコールの合皮だけど安っぽくも地味にも見えなくて、私の身長を7センチ底上げしてくれる素敵なお仕事靴だった。

泣きっ面に蜂の気分。
いや、実際泣いてませんけど。

私はその場にうずくまった。
横を帰宅を急ぐ人たちが通りすぎていく。
その足音を耳に、私は立ち上がれない。

私もあの波に乗らなきゃいけないのに。

今は、それが堪えようもなく苦しい。




「太刀川か?」


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