ハロー、マイファーストレディ!
どうして、今更?
十年もの間、あの騒動は誰からも忘れ去られていたはずなのに。
父の名誉の回復も、硴野が犯した罪に対する糾弾も、おそらく永遠に成し遂げる事は不可能だと思っていた。

だから、私は。
征太郎と契約を交わしたのだ。

いつの間にかきつく握りしめていた、手の中の四角い紙切れに目を落とす。

この男の言うことが真実ならば。
私の復讐はもっと簡単に成し遂げられるのかもしれない。

犯した罪には時効があるだろう。
完全には硴野の罪を立証出来ないかもしれない。
それでも、不正を暴露すれば、必ず硴野の政治生命は終わる。

それこそ、長年、自分の心の中にあった願いだったはず。

鞄の中からスマホを取り出す。
皺が寄った名刺を裏返して、番号を震える手でゆっくりとタップした。






───けれども、私がその番号へ電話を掛けることはなかった。

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