ハロー、マイファーストレディ!
ソファに座ると、早速谷崎さんが口を開いた。
「昨日、征太郎から説明があったと思うけど、これから真依子ちゃんを大々的に征太郎の婚約者として売り出すつもりでいる。」
「売り出すってアイドルじゃないんですから…」
突然、ちゃん付けで呼ばれたことにも驚いたが、それ以上に昨日聞いた計画とは趣が違いすぎて、ポカンとさせられた。
どこか、谷崎さんは楽しそうだ。
「似たようなもんだな。婚約を発表するまでは、はっきり名前や顔は公表しないけど、意図的にマスコミに情報を流して報道させる。まずは、政界のプリンスのロマンスに興味を持って貰わないとね。」
「昨日のスクープももしかして…」
「ああ、あれは、情報を週刊誌にリークして撮らせたんだ。時間と場所をわざわざ指定して。でも、これからはマスコミが好き勝手にカメラを向けてくる。だから、外では絶対に気を抜かないように注意して欲しい。」
「はあ。」
具体的な話を聞いてもイマイチ自分が何をしたらよいのかピンとこなかった私は、何とも情けない相づちを打つ。
その様子を見て、谷崎さんは、やや軽めのトーンで説明を続けた。
「要するに、いつでも誰かに見られていると思って生活すればいいんだけど。」
「普段も見られて困るようなことはしてませんが?」
「求められるのは、高柳征太郎の恋人として相応しい行動だから。男と二人きりで会ったり、一人で飲みに行ったり、大量に買い物したり、贅沢するのは禁止ね。」
「普段から、そんなことしてないので大丈夫かと思いますよ。」
「ああ、確かに。真依子ちゃんの場合は逆か。事前に調べさせてもらったけど、普段の生活がものすごく地味だから、少しアクティブになるくらいがちょうどいい。とりあえず、見た目はあの夜みたいに、少し華やかにしたほうがいいな。もう、病院での男除けは必要ないだろう?」
どうしてか、彼は私が男除けのためのメイクをしていることを知っていた。
少し腑に落ちなかったが、彼の指摘はもっともだったので、そのまま返事を返す。
「ええ。病院中に昨日のスクープが知れ渡っているでしょうからね。」
「夕方、瞳ちゃんにここに来て貰うことになっているから、そのときに少し相談しよう。」
「瞳が来るんですか?」
「ああ、この後迎えに行くことになってる。」
瞳と会えると分かって、私はまた一つ心強くなった気がした。
ひとまず、色々と話したいことがある。