ハロー、マイファーストレディ!

「こちらがお部屋です。お布団は押し入れに、タオルはここの棚にあるので、自由に使ってくださいね。」

旦那さん同様に、にこやかな笑顔で現れた美佐枝(みさえ)さんは、てきぱきと説明をしていく。
やはり、計画のことは何も知らないようで、私のことを高柳征太郎の本当の恋人だと思っているのか、時折、生温かい視線を向けられる。
でも、その視線はとても好意的だったので、気付いていない振りをした。
何か聞かれない限りは答える必要はない。下手にしゃべればぼろが出る。

一通り部屋や生活用品の説明を受けた後で、キッチンに用意してもらっているという食材を見に行く。
冷蔵庫を開けてみれば、ゆうに一週間は困らなさそうな充実ぶりだった。

事前におそらく私がある程度自炊しているという情報は聞いていたのだろう(私は申告した覚えはないけど)。
冷蔵庫には、出来合いのものやインスタントだけでなく、生鮮食料品も用意されていた。

「何がお好きなのか分からなくて、いろいろ買ってしまって。」

その美佐枝さんの言葉通り、冷蔵庫の食材はバラエティに富んでいた。
納豆やキムチ、何故かアンチョビまで入っている(彼女は発酵食品好きに違いない)。

「ありがとうございます。飽きずに毎日食事できそうです。」

本心からお礼を言えば、彼女は嬉しそうに微笑んだ。

「よかったら、お食事の好みを教えてくださらない?明日以降の買い出しの参考にしたいの。」
「当分のうちは十分そうですけど、もし足りなくなったときはお願いします。好き嫌いは特にありません。普段、よく作るのは和食が多いですけど、和洋中何でも好きです。」
「まあ、和食がお得意なのね。」
「得意というほどではありませんが、祖母と一緒に住んでいた時の名残で、献立が自然と和食に偏ってしまって。」
「それは、征太郎さんもお喜びでしょう?和食がお好きみたいだから。」

< 85 / 270 >

この作品をシェア

pagetop