ハロー、マイファーストレディ!
突然振られた“恋人”の話題に、慌てながらも「ええ、まあ」と何とか微笑み返した。
和食が好きかどうかなど、知らない。
なぜなら、彼に料理を振る舞ったことなどないからだ。
でも、“恋人”なら知らなければ不自然なのかもしれない。

「やっぱり。口に出してはおっしゃらないけど、何となくそうだと思ってたの。征太郎さんは高校生の頃からこちらで一人で暮らしてらしたから、何度かお食事のお世話をしたことがあって。」

どうやら、うまく誤魔化せたらしい。美佐枝さんは目を輝かせながら質問を投げかけてくる。

「何が一番お好きなの?」
「へっ?」
「真依子さんの手料理で、征太郎さんが一番お好きなのって何かしら?」

こういうデータはあらかじめ設定を教えておいて貰わないと困る。
恋人同士の二人で、話していることがまるで違えば、そこから怪しまれることにもなりかねない。
ひとまず、事前の調整を何もしていない状態では、適当に答えるしかない。

「えーっと…揚げ出し豆腐、ですかね?」

とりあえずは、自分の好物を言ってみる。
もうこうなったら、彼の方に「和食派で、好物は揚げ出し豆腐」を徹底して貰うしかない。

これは、思ったよりも大変なことを引き受けてしまったかも知れないと、思わず冷や汗が背中を伝った。
一人密かに焦っている私に対して、美佐枝さんは「ラブラブね~」と、最後まで絶好調だった。
< 86 / 270 >

この作品をシェア

pagetop