さちこのどんぐり

~そばにある笑顔

大森のマンションに奈津美が出入りをするようになってから、
ある事象が彼を悩ますようになっていた。

コーヒーカップなど少しずつ奈津美が自分の私物を
大森の部屋に持ち込むようになっているのだが、その趣味というか…
そもそも私物自体に「問題」があるというか。



その夜も仕事終わりに駅に着いた大森は、奈津美からの

「シチュー作って待ってるよ。すっごく美味しくできたと思う。」

というメールを受け取っていた。



最近、彼女と夕食をとることが多くなっていた大森は、
帰宅時間が早くなっていた。
帰りが遅いと思っていた部下たちも大森が早く帰るようになると、同じく早く会社を出るようになった。
休日に仕事をすることもなくなり、
それでも仕事は以前と同じく、滞ることは全くなかった。
たぶん、以前はだらだらと仕事していただけで、メリハリがなかったのだ。

営業所の業績も悪くない。むしろ順調だ。
そういったことでも、大森は奈津美と出会えて本当に良かったと考えていた。

しかし…

大森はこれまでも結構、女性にはもてた。
彼自身、自分に一種のダンディズムを意識していた。

マンションの8階にある部屋までエレベータで上がり、
大森は自分の部屋のドアを開けた。

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