さちこのどんぐり

~守りたい笑顔

大森は自分のなかに溜まっていくストレスを感じていた。

もともと彼には、自分がこの年まで独身でいることの原因も分かっていた。
「寂しがり屋の一人好き」という極めて面倒臭い彼の性格のためだ。

人一倍寂しがり屋のくせに、一人になれる時間がないと、
なぜかイライラしてしまう。

彼が大学生になった18歳から、ずっと一人暮らしだったため家事は
これまで付き合ったどの女性よりも得意だった。

そのうえ、自分の生活や、そのリズムを他人に干渉されたり、乱されたりすることも嫌いだった。

でも一人も嫌い。

繰り返すが、本当に面倒臭い性格だった。



彼女ができても、なかなか長続きしないのも、このことが原因であろうし、

自分を「結婚には不向きな男」だと考えていた大森は
そもそも「結婚」というものに抵抗があって
長く続いた彼女とでも
「結婚」の話が出るたびにケンカになってしまっていた。



そんな大森にとって、最近、奈津美がストレスの元になっている。

日々、カラフルに変わっていく部屋や
最近、一人の時間が持てなくなっていること。
また彼女のペースに振り回されることも多く、
大森は自分の生活のリズムを乱されていると感じていた。



しかし、奈津美とは別れたくない

確かに、付き合い始めた当初は戸惑い、
彼女のペースに振り回されていることを快く思わないこともあったが、

いまでは、そんな自由で刺激的な彼女の言動が楽しいと感じることも多い。

そんな無邪気な奈津美に対して、
大森は心から「かわいいなぁ」と思っていた。

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