夢幻泡影
風車効果を実感した瑛は、巡察から帰ってきた藤堂のもとへ

いつの間にやら、喋ったと噂が広まり


「ただいま!!喋ったんだって?」


知らせる前に知られていた


少しがっかりしながらも にこっ

頷いた



「残念ながら… 無意識に喋れたようで、今は出ないんですよね!?」


どこからか現れた沖田


「うわぁ!!総司!!!!」


藤堂だけが驚いた



「おーい!!瑛!話しよーぜ!!」


いつの間にやら藤堂の部屋には、幹部が集まる

ガヤガヤと言い合う皆を見つめ思う


『ほんと…賑やか……あたし…ひとり…』


「瑛…?どうしたの?」



一人俯く瑛の肩に沖田が手を置き声をかける


必死に首を横に振るが、説得力はない

瑛の頬を涙がつたっていた



『ここにお千さんがいたら…… 』




皆が心配し、懸命に声をかけていたが、

沖田の肩に頭を預け、意識を飛ばした



土方の指示で、土方の部屋で

布団に寝かされ、山崎の診察を受ける


「心労やな。眠れてへんちゃうかな?」



この一月、


笑わなければ、喋らなければ、皆に喜んでもらはなければ、


『捨てられる…』


お千を亡くしたことも、悲しみやさみしい気持ちを悟られないように


心に無理をしすぎた



〝俺の部屋なら、誰も騒がねぇからな〟



二人きりになった部屋で、瑛の頭を撫でながら、土方がポツリと呟いた

「ゆっくり休め… 」






「す……てな…い……で……」






瑛の寝言に土方が目を見開き固まる



「バカヤロウ。すてるわけねぇだろ!!」


眉間に皺を寄せ、触れずにいる瑛の過去が

とても辛いもので、まだまだ心に影があることに悔しい気持ちだった


「俺たちがそばにいる!守るからな!」



瑛が苦しそうな声を出すたびに

土方は一晩中語りかけた

時々 頭を撫で、手を握って擦る



「瑛。強くなれ。」
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