TRIGGER!2
「“レッドルビー”のママも、運ばれて来たわよ」
「ここに?」
「えぇ、603号室。あそこは集中治療室だから、入れるかどうか分からないけど・・・って彩香ぁ!」


 彩香は病室のドアの前で振り返る。


「アイツ等来たらここで待ってろって言っとけよ!」


 そう言い残すと、彩香はエレベーターに向かった。



☆  ☆  ☆




 603号室のドアには『面会謝絶』と書いてある。
 横のプレートを見ると、立川たか子と表示してあった。
 彩香は静かに、ドアを開ける。
 カーテンの引かれた病室は薄暗く、レッドルビーのママ、立川は点滴のチューブと酸素マスク、心電図を図る機械に繋がれたまま、中央のベッドに眠っていた。
 確か高田は、麻酔が醒めるのは午後くらいだ、と言っていたが。
 それでも彩香は、どうしてもこの中年のオバサンと話をしなければならなかった。
 どうして四階のホクロのヤツは、“ムスク”や“レッドルビー”を知っているのか。
 それも、『小百合ちゃん』や『サトシ』という人間に変装してまで。
 そして。


「どうしてあんたらが命を狙われなきゃならなかったんだよ・・・」


 病室には、無機質な機械音と規則的な立川の呼吸の音しか聞こえない。
 彩香はゆっくりとベッドに近付いた。
 化粧も落ちて、目の前にいるのは普通の疲れたオバサンだった。
 ネオンの中の煌びやかな面影は、太陽が登ってしまうと欠片も無くなってしまう。
 きっとこのママも、夜の暗闇の世界で細々と生きてきたのだろう。
 色々な人間と関わって、その中で流されまいと、必死で。
 『サトシ』はこのオバサンにとって、どんな存在だったのか。
 四階のヤツはそれを知っててわざと『サトシ』になりきっていたのか。
 分からない。
 このオバサンから直接、話が聞きたい。
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