TRIGGER!2
 そう思った時、立川の目が微かに動いた。


「おい・・・!」


 小さく呼び掛けると、立川はうっすらと目を開ける。


「ここは・・・」
「病院だよ。生きてて良かったな」


 彩香が言うと、立川は自嘲的な笑みを浮かべる。


「どっちでもいいよ・・・」
「何でそんな事言うんだよ」


 まだ身体が思うように動かないらしく、立川は目だけをこっちに向けた。


「おや、誰かと思えば・・・この前サトシと一緒に来ていたお嬢ちゃんだねぇ。おかしいと思ったんだよ、あたしに身内はいないから」


 前回会った時とはまるで違うこんな格好をしているのによく分かったなぁ、と彩香は感心する。


「そのサトシの事で聞きたいんだけどさ」
「サトシはもう・・・この世にゃいないんだよ」


 そこまでは、大体予想が出来た。
 本当に聞きたいのはその先だ。


「ゆっくりでいいんだ。話を聞かせてくれないか?」
「・・・・・・」


 点滴の繋がっていない左手で酸素マスクを取り、立川は天井を見つめた。
 その視線は、遥か遠くに向けられていた。



☆  ☆  ☆



「大事な人がこの世から消え去るって、まるで心にポッカリと穴が空いたようだって言うだろ。あの時はまさにそんな言葉がしっくり当てはまる状態だった・・・」


 立川は、ゆっくりと話し出す。
 身も世もなく泣き明かし、仕事もままならない状態で。
 食事も喉を通らずに、生きる気力を失っているというのは、誰から見ても明らかだった。
 そんな中、数少ない常連客の1人が、いい医者がいると紹介をしてくれた。


「まさかそれ、佐久間か?」
「知っているのかい。・・・その通りだよ」


 そう答えて、立川は一回、大きく息を吐いた。
 佐久間クリニックから処方される薬は、本当によく効いた。
 今日起こる楽しい事だけを考える事が出来た。
 立川は瞬く間に健康を取り戻し、そして生き生きと過ごす日々を取り戻した。
 だが、気付かないうちに、心に空いたままの大きな穴が何なのか、悩むようになる。
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