TRIGGER!2
「目の前で心が壊れる人間を、もう見たくねぇと思った。それだけだ」
「・・・・・・」
「俺のーー母親だよ。今は遠くの街で、入院してるがな」


 どうして、と聞こうとしたが、何故か声にならなかった。


「ま、昨日は結果オーライだったんだからな。同じ人間なんて、この世の中にゃいねぇんだし」


 だから“また”あの時と同じことが起きるとは限らない。
 目の前で心が壊れてしまった母親と、同じことが。
 ジョージはそう言いたかったのかも知れない。
 過去に何かあったのだろうが・・・自分が聞いていいものなのか、正直迷った。


「それにな」


 ジョージは彩香の頭に手を置いた。


「あんまりバカな事すんな」
「何がだよ?」
「佐久間が銃を向けた時、どうするつもりだったんだよ?」


 あぁそれか、と彩香は苦笑する。
 佐久間が引き金を引く直前に、少女が動いたから良かったものの。
 下手をすると、脳天に風穴が開いていたかも知れなかったのだ。


「ま、それも結果オーライだっただろ」
「あのなぁ」


 ガックリとうなだれて、ジョージはため息をつく。


「ジョージは見た目以上に心配症なんですよ、彩香さん。だからあんなに不機嫌だったんです」


 そう言いながら、風間がジョージの後ろに立つ。
 ほっぺたにうっすら口紅がついているように見えるのは、気のせいだと思う事にしよう。


「・・・それにしても」


 風間は両手を腰に当ててまじまじと彩香を見つめた。
 ピンクのひらひらフリルとリボン。
 そして、悪ノリしたとしか思えないような化粧。
 堪えきれずに、風間とジョージは笑い出す。


「ぶわっはっは! よく今まで笑わなかったよなぁ、俺!!」
「いっ・・・いや、似合ってますよ。意外すぎて逆に新鮮ですねぇ」
「・・・・・」


 わなわなと震える彩香。
 “AYORA”が再開したら、絶対に店で暴れてやる、と、彩香は心に誓う。


「で、レッドルビーのママさんはどうでしたか?」


 涙を拭きながら、風間は聞いた。
 そこまで笑わなくていいだろ、と、彩香は文句を言う。
 そして、彩香はさっきの病室での話を、2人に聞かせた。
 話をしていくうちに、さっきの会話が頭の中に蘇る。
 多分これは、大事な事なのだ。


『あの人は他にも、あたしのサトシみたいな役割をしていたのかい?』


 “ムスク”のバーテンダーには、小百合ちゃんという若い女。
 “レッドルビー”のママには、サトシという中年の男。
 ーーそして。
 “スターダスト”には。
 彩香ははっとして、顔を上げた。


「美和・・・」


 思わず呟いた彩香に、風間は問い掛ける。
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