TRIGGER!2
「美和がどうかしましたか?」
「昔の“Agua azul”にいたんだから、佐竹も当然美和の事、知ってるんだよな?」
「そうですね」
「佐竹も、美和の事が好きだったんじゃ・・・」


 彩香が言うと、風間は微かに眉をひそめた。
 ジョージが慌ててフォローする。


「おいおい彩香、そう言うことはもうちょいオブラートに包んでだな」
「その可能性はありますね。でも、それがどうかしたんですか?」
「襲われた奴らの共通点・・・薬の他にもあったよ」


 四階の、ホクロのヤツ。
 アイツはきっと、忘れたい過去を無くす為に薬を飲んでいる人間の元に現れるのだ。
 大切な人を失い、その事実から目を背けようとしている人に、偽物として姿を見せる事で現実を分からせる為に。
 多少強引な方法ではあるが、彩香は、四階のヤツの行動を否定しようとは思わなかった。
 起きてしまった現実を、受け入れがたい現実を、ゆっくりと時間をかけて少しずつ、少しずつ消化していく手助けを、アイツはしているのだから。
 そうしていれば、記憶を無くす薬なんて必要ないのだ。


「きっと美和も・・・同じ気持ちだったんだと、思います」


 風間は言った。


「じゃあ何故、黒幕はあの3人を襲ったんだ?」


 屋上の手すりにもたれかかり、空に向かって煙を吐き出しながらジョージが言う。
 四階のホクロのヤツ。
 記憶を無くす薬。
 この共通点を持っている3人が、襲われた。
 動いたのは、黒ずくめの連中・・・でもそれは、黒幕に雇われているだけの組織だ。
 水島千絵を誘拐した黒幕の目的は、記憶を無くす薬の改良。
 その目的は、この薬で莫大な利益を得る事。
 その目的達成に邪魔な存在は、強行手段を使ってでも消し去ろうとする。
 じゃあ、今の状況でヤツらにとって邪魔なのは誰だ?


「ま、そりゃ当然、俺らだろ」
「それだけじゃないですね。黒幕は主な取り引きをあっちの世界で行っています。そして、そこへ通じる“ドア”は、この街を中心に出現している・・・だから、社長を始めとする我が峯口建設の存在も、あちらさんにとってはかなり邪魔だと」


 そうだな、と彩香も頷く。
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