山桜
『どうぞ頭をお上げください…
私のような世間知らずの者でよければ、お付き合いさせてください
さあ、どうぞおあがりください…』

近藤はそう言って山南の腰に手を添え、道場内へ入るよう促した

山南は一礼し、草履を脱いだ

『源さん、お茶をお願いできますか』

源三郎はコクリと頷き、早足で土間へ向かっていった

『ちぇっ…せっかく久しぶりに試合が出来ると思ったのになぁ…』

ふて腐れた表情をして、沖田もまた道場の奥へと姿を消していった

土方も山南を一瞥すると、沖田と同じように道場の奥へ早足で消えていった

『無礼な者ばかりで申し訳ありません
しかし、他意はありませんのでご容赦ください…』

そう言って深々と頭を下げる近藤に山南は驚いた
腰が低いと傍目には見えるが実は違う
まるで君子の如き振る舞いである
臣下の不手際を君子が謝罪すると同時に、臣下を庇う

まるで三国時代の劉備を彷彿とさせる

『お気になさらず…
突然出向いた私に非があります
皆様方は私を道場破りと勘違いなされたようで、おそらく一度抜いた剣を鞘に戻せなくなったように、後に引けなくなったのでしょう…』

近藤は頭を上げた
そして山南を応接に使う部屋へと案内した
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