山桜
『近藤先生…ここ、天然理心流は実戦向きの道場であるとお伺いしております
戦になればもちろん、大きな力になることは間違いはない…しかし』

山南は近藤から目を背けた

『この道場で学ぶことにより、要人暗殺など、より実戦的な企てをする輩も出てくる可能性がある…
そうなれば幕府からこの道場は目を付けられ反乱分子として見られる…』

近藤を横目で見るも、近藤は微動だにせず、表情も崩していなかった

『そのような方は門人にはいらっしゃいませんか?近藤先生…』

近藤はやっと表情を変えた
口角を上げたと思った瞬間、大声で笑い出した

『はっはっは…!
山南さん、買い被り過ぎですよ!
門人はほぼ身内のようなもので、私の故郷である多摩の人間がほとんど…たまに故郷に出稽古に行くほどです
近所の方も門人としているが、この建物を見てお察しのはず…門人は少ない貧乏道場です
戦になったとしても、国の力にすらなれませんよ』

近藤は言い終わると茶を一気に飲み干した
山南は一歩下がった

『そうですか…ならば安心です
しかし近藤先生は面白い人だ…
そこまで胆があり、風格すらあるのに野心がない…
一軍の将にもなれるお方だと思いますが…』

近藤は笑顔のまま答えた

『山南さん、あなたこそ面白い方です
今日初めて会った人間をそこまで褒めちぎる人はそうそういませんよ?』

近藤がそう言って微笑むので、山南も微笑み返した
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