艶麗な夜華
スマートフォンを手に取ると求人誌に書かれた電話番号を入力する。


本当は、今の今まで迷っていた。



もうあそこに居る意味はない。



通話ボタンを押すあたしに迷いはなかった。



「求人誌を見て連絡させていただいたんですが…」



そしてあたしは明日、面接に行く。



そのお店はエレナ。



この街で1番の高級クラブ。



きっとそこは、ジュアンとは比べものにならないくらい厳しいところかもしれない。


今のお店で2番目に指名を取っているあたしだけど、


エレナではまったく通用しないかもしれない。


もしも採用が決まっても、


今まであたしを指名してくれていたお客さん達は、


料金設定の高いエレナには来てくれないかもしれない。


いろんな事を考えると容赦なく不安が押し寄せてくる。



でも、このままじゃ駄目なんだ。



恭也が動き出した今、


彼が遠くに行ってしまうと不安になるそれは、


自分が弱くて情けないなら。



此処で一歩踏み出す事によって、


なにかが変わる気がした。



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