飼い猫と、番犬。【完結】
平助は……好きだ。
でもそれは友達というか家族というか、兎に角男女のそういう感情とはまた違ったもので。
だから平助の気持ちを知ってしまった今、これからどう接して良いのかわからない。
今になって手首にうっすらと赤黒い痣を見つけた私は、そこに平助の想いを見た気がしてそっと、掌で包んだ。
「はぁ」
心の臓のどきどきは収まったけれど、今度は胃がきりきりと痛み始める。
しかしながら部屋は隣で、同じ場所で生活する仲間である。いつまでも避けてばかりもいられない。
話さなければ何も進まないのだ。
……よし。
少しばかり気合いをいれて腹を据えると、落ちていた視線を無理矢理上げて、部屋に続く廊下を曲がった。
ぶ厚い雲が垂れ込めているからといって、勿論夜程の暗さはない。
だから、すぐに気が付いてしまった。
昨日の夜と同じようにして、私の部屋の前にうずくまっているその存在に。
「平……」
躊躇いがちに口にしようとした名は尻窄みに消えてしまった。
背を丸め、立てた膝に頭を伏せていた平助は、もしかしたらあまり寝ていないのかもしれない。
ゆっくりとこっちを向いた丸い目の下はくすんでいて、その顔にいつもの覇気はなかった。