飼い猫と、番犬。【完結】
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なんちゅー女や。
ごろりとうつ伏せに身を起こしつつ、賑やかに走り去っていった足音を遠くに聞いて、鈍い痛みの残る腹を擦る。
今までそれなりに多くの女子を見てきたが、俺を蹴り飛ばして逃げたのは沖田が初めてだ。
もっとしおらしぃでけんのかい。
なんて突っ込んでみるも、本気であいつにそれを望んでいる訳ではないから笑みしか浮かばない。大人しいだけの沖田には何の興味もないのだから。
……かといって蹴られて悦ぶ趣向は勿論ないが。
いつか絶対乗りこなしたるっ。
無駄に煽られた朝。
嬌声めいた沖田の声にちょっとばかり心も体も火がついた。
じゃじゃ馬相手にふんと新たに気合いを入れて、狭い布団で凝り固まった体で一つ、伸びをした。
結局沖田はその日の朝稽古には姿を見せず、気の乱れた藤堂くんから察するに、あのあと何かしら言葉を交わしたのだと思われた。
一方で藤堂くんの方はと言えば部屋も原田くんと入れ替わり、あれきりしゅんと大人しく鳴りを潜めてしまった。
端から見れば幹部の仲違いにも見えるそれは平隊士の噂の恰好の的になり、彼方此方で言いたい放題になっている。
まぁ火のないところに何とやらとはよく言ったもので。
俺までちゃっかりその噂話に巻き込まれていたりするのだが。
「間男さん」