飼い猫と、番犬。【完結】
慎ましやかに平凡に毎日を暮らしているとそんなものは中々知り得るものじゃない。やはりそこは気になるようだ。
差し出された手を握り返して笑みを貼り付ける。
「言うてもそない詳しい訳やあらへんよ、昔とった杵柄っちゅうやっちゃ。仕事柄顔だけは割かし広かってん」
裏を必要とするのは何も此処のような幕府側だけではない。
俺のような人間が直接異国の人間とやり取りすることはなかったが、かぶれた人間は何人か見てきた。
どんな知識でもあればそれなりに役には立つのだ。
「……そうですか。もし興味がおありならばと思ったのですが」
色々と。
同じく作った笑みで小首を傾げるその人は、どうやら俺を探りに来たらしい。
近頃人を寄せて講釈のようなものを開いていると聞く。恐らくそれの誘いか。
隊士も優に百を越えた。
ただでさえ一つに纏まるのが難しいのをわかってか、着々と根を張る伊東には何かしらの目論見があるように思える。
はっきりと口にしないところを見ると、未だ計りかねているのだろうが……。
「ええよ、また寄せてもらいますわ」
腹の探り合いはお互い様やし。暫く仲良ぅさせてもらおかな。