飼い猫と、番犬。【完結】
「それなら良かった」
柔らかな笑みを浮かべて俺を見下ろすその顔からは真意の程は読み取れないものの、何となく背筋が薄ら寒いのは本能的な何かだ。
裏が長い分それなりに目も肥えた。こういう勘は結構当たる。
余程の悪党なら兎も角、大抵の人間には例え俺を嫌う相手であってもあまり嫌悪感というものは湧かない。
だからこそ俺は、自分の直感をそこそこ信用している。
やっぱり好かんわぁーこん人。
ちゅか手ぇ、早よ離して。
「次は三日後の八ツ刻に開くので都合が良ければどうぞ」
ぞくり、首の後ろが逆立つ。
軽い音を立てて手の甲に触れた唇に、思わず目を瞠った。
「挨拶ですよ」
けれどもにこりと涼しげに微笑むその人に口角が上がる。
「あー自分もそっちの口な」
「この様な場では皆さんそうでしょう?」
確かに古来、女のいない戦場(イクサバ)などでは手軽な捌け口として男色が当たり前の様に行われてきた。
今も刀を持つ連中には多く見られ、女人禁制の此処では最早堂々たるもの。
この人の見目なら釣れる人間も多いのだろう。
ようわかってはんなぁ。
「……まぁせやけど俺はそーゆーのええわ、掘られるより掘る方がええもん。それに、あれがヤキモチ妬きよるさかいに」