飼い猫と、番犬。【完結】
建物の陰から此方を覗く沖田に視線を送れば、そいつはぴくりと跳ねて顔を引っ込めた。
確かに気配は上手く消していたが、本気で俺に気付かれていないと思っているあたり、まだまだ甘い。
良っしゃ、やっと逃げれる。
「言うたやろ?俺は間男やあらへんて。ま、そーゆーこっちゃからあれにも手ぇ出しなや?」
仮にも伊東は副長と並ぶ隊の幹部だ、表立ったいざこざは避けたい筈。余程の阿呆でない限りこれ以上沖田に手を出す事はないだろう。
目の前のすけこましにそう釘を刺し、ほな、と満面の笑みを残すと逃げた沖田の捕獲に向かう。
「ええ、承知しました」
笑いを含んだその声に一応手だけを上げて、俺は沖田の消えた壁を曲がった。
隠れるつもりはなかったのか、幾らも行かないうちに後ろを向いて佇む姿が目に入る。
辺りから死角になった建物の陰、もしかしたら逃げた訳ではなく俺を此処へと誘導しただけなのかもしれない。
近寄れば顔だけを横に向けて言葉を待つそいつに、肩を竦めて小さく笑った。
「コソコソせんともっとバーンと出てきてくれた方が良かってんけどなー」
「や、何となく見てはいけないものを見た気がして」
「阿呆か、あれはどー見てもあっちが勝手にやろ。俺はそっちの趣味はあらへんっちゅーねん」
「でも掘るとか掘られるとか言ってたじゃないですか」
……中々はっきり言うやんけ自分。