飼い猫と、番犬。【完結】
本気で言っていない、そうわかるから笑って適当に返しておく。
こんなやり取りが楽しかった。
粛々と慎ましやかに強かだったあいつより、少々乱暴でも単純でどこか脆いこいつの方がよっぽど構ってやりたくなる。
まぁ、正直そんな俺の趣味もどうなのかと思わないでもないけれど。
でも今なら少しわかる。
女に心を許さなくなったのは、どこかでずっと過去に固執していた俺の弱さ故なのだと。
とうに忘れたつもりでも、それは小さな棘の様に記憶の底に引っ掛かっていたのだ。
まぁ、だからと言って裏で見る女の顔はやはり中々恐ろしいものが多くて、おいそれと簡単には信用出来ないのも確かであるが。
それでもこいつは、沖田だけはそんな女でないと妙な確信が持てた。
……単純な奴やさかい、なんやろなぁ。
そんな自分を鼻で笑って、腰に手を当てぶつくさと文句を垂れる沖田を見据える。
「まぁんなことばっか言うてんと早よ顔洗てき。今日は大樹公(征夷大将軍)の入洛警護やろ。俺は関係ないけど自分らは」
「あ!そうです!その事でさっき土方さんが貴方を呼ぶようにと」
「……副長が?」
ぴくりと眉が動いた。
今日の警護は俺留守居やて言うてはったのに。
それに……。
「べっ、別に顔洗いに来たらたまたま会っただけですからねっ!」
「別に俺なんも言うてへんやん」