ひねくれ作家様の偏愛
九段下駅方面に坂を下ろうかとも思った。電車に乗るならこちらだ。
しかし、なぜか胸騒ぎがして、反対方向へ足を向けた。
靖国神社の広い境内、彼を探して歩き回る。
海東くんは以前からライナーワークのオフィスに立ち寄った帰り、よく靖国神社を散策している。私自身、幾度か見かけたことがある。
こんな雨の夜に散策しているとは思えないけれど、あんな別れ方をして彼が真っ直ぐ帰るとも思えなかった。
いいや、これで会えなかったら、仕方ない。
雨が靴に染みを作る。ジーンズの裾に泥がはじける。
すでに閉店した茶屋のベンチに、海東くんが腰掛けているのを見つけたのは間もなくだった。
「海東くん、風邪引くよ」
突如傘を差しかけてきた私を、海東くんは驚いた顔で見上げた。
「何やってんですか?」
「春だけど、今夜は結構寒いから。雨で冷えて体調崩したら、次の作品書けないでしょ」
海東くんが子どものように首を真横に向ける。
「桜庭さんは俺が書かなくても、もういいんでしょう」
「……うん、担当としては無理して書かなくてもいいと思ってる」
しかし、なぜか胸騒ぎがして、反対方向へ足を向けた。
靖国神社の広い境内、彼を探して歩き回る。
海東くんは以前からライナーワークのオフィスに立ち寄った帰り、よく靖国神社を散策している。私自身、幾度か見かけたことがある。
こんな雨の夜に散策しているとは思えないけれど、あんな別れ方をして彼が真っ直ぐ帰るとも思えなかった。
いいや、これで会えなかったら、仕方ない。
雨が靴に染みを作る。ジーンズの裾に泥がはじける。
すでに閉店した茶屋のベンチに、海東くんが腰掛けているのを見つけたのは間もなくだった。
「海東くん、風邪引くよ」
突如傘を差しかけてきた私を、海東くんは驚いた顔で見上げた。
「何やってんですか?」
「春だけど、今夜は結構寒いから。雨で冷えて体調崩したら、次の作品書けないでしょ」
海東くんが子どものように首を真横に向ける。
「桜庭さんは俺が書かなくても、もういいんでしょう」
「……うん、担当としては無理して書かなくてもいいと思ってる」