ひねくれ作家様の偏愛
「じゃあ、放っておいてください」


「でも、一個人としては書いてほしいと思ってる。ファンだから、海東くんの」


海東くんが苛立たしげに立ち上がる。
私を置いて歩き出そうとするので、思い切って彼の右手首をつかんだ。


「待って!本当に風邪引くから」


「もう、濡れてます。タクシーつかまえて帰るだけですから、どうでもいいですよ」


「家までそんな冷たい格好なんて……。あ、そうだ」


私はポケットの中に自宅の鍵が入っていることに気付いた。
朝、家を出た時にジーンズのポケットに入れたままのものだ。


「海東くん、私の家、この近所だから。少し歩ける?服貸すよ。たぶん、海東くんが入るサイズのものがある」


私の申し出に海東くんがかすかに驚いた表情をする。
自宅に招かれるなんて思いも寄らなかったのだろう。私だって不本意だ。
男性、……よりにもよって海東くんを自宅に入れるなんて気まずいことこの上ない。

だけど、このまま帰したくない。背に腹は変えられないというやつだ。
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