ひねくれ作家様の偏愛
「海東……先生、怒るんじゃないの?」


「だってあの人が悪いっしょー。取りに来いだの、担当が俺じゃ気に食わないだの、口出すなら書かないだの……。そんなんじゃ話にならんからね。俺が適当に作り直すしかないんだわ。正直、海東先生に頼まなくても書いてくれるライターさんはいっぱいいるからさ」


アプリ用乙女ゲームのシナリオは外部発注で作ることが多い。
ゲーム専門のライターによって作られるけれど、中には主婦や女子大生なんかが内職を兼ねて請け負っている場合もある。
能力に長けていれば、素人も玄人も関係なしという世界。

たいていは打ち合わせも原稿の提出もメールなんだけど……。
海東くんのように原稿を取りにこさせ、打ち合わせは拒否という態度では煙たがられて当然だ。

あげく、彼は飯田が担当であることを嫌がり、アプリ部門とは無関係である私を担当に指名している。

そりゃ、彼のもともとの担当は私だけどさ。

そもそも、アプリゲームの単発シナリオなんて、“海東智”が名前も出さずに受ける仕事ではない。
本来のところは。
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