ひねくれ作家様の偏愛
私の心配は杞憂に終わった。
パーティーが始まり、なんだかんだと裏方の仕事をこなして、ようやくグラスを手にする私は海東くんの姿を探す。

いたいた、と思ったら、どうやら話しているのは我が社の営業本部長だ。
本を作るのが編集部なら売ってくれるのは営業。
さらに横から話しかけているのは、ソフト開発部の課長だ。
海東くんは以前のコネをきちんと把握して、挨拶回りをこなしている模様。

偉いじゃない!


「桜庭ァ」


背後から声をかけてきたのは飯田だ。

なんだか久しぶりに顔を合わせた気がする。最後に会ったのは、海東くんの件でお互い少し感情的になった時。あれ以来だ。


「飯田も来てたの?」


「内山田先生の『魔法物理学と恋少女』アプリで配信されてるんでー。お世話になった先生のパーティーに来ちゃ悪いかよー」


変わらぬ態度にかすかに安心する。
飯田はいつもの飯田だ。


「はーい、悪くないでーす」

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