ひねくれ作家様の偏愛
「頭ですか?いいですよ」


俺は千弥さんをベッドに押し込むと横に座り、彼女の短い髪に指を伸ばした。


「ほら……外はもう明るいでしょ?なんか、自分でも時間の感覚があって驚いてるんだけど、眠れなくて……」


まだ恥ずかしそうに言い訳している千弥さん。俺はしぃっと人差し指を唇の前にたてる。


なんのことはない。
眠れないなんて言っていた千弥さんは5分と経たずに眠りに落ちていった。

俺は眠ってしまった千弥さんの髪を飽きもせずに撫で続ける。



大好きな千弥さん。


出会ったのはもう5年も前。

リクルートスーツを着た新人だった千弥さんはダサくて、顔だけは悪くないけれど女として本当に無しな部類だった。
後にまさかこれほど愛しい存在になるとは、あの頃は想像だにしなかった。
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