ひねくれ作家様の偏愛
社内で俺と千弥さんの関係は公表していない。(飯田のような例外はいるが)
俺は誰に言ってもいいと思っているけれど、千弥さんに迷惑がかかるのは嫌だ。

せめて、俺がもう少し立場を確立して、千弥さんを守ってやれるくらいの男にならなきゃいけない。


「単行本、社内の前評判すごくいいですよ。こっちも売れるように頑張るんで」


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


俺は頭を下げ、木原編集長と別れた。

アプリの方といい、単行本といい、この先も書き続けるのが俺の仕事。
稼げなきゃ作家じゃないし、稼げなきゃ千弥さんに未来だって誓えない。

やっとこ仕事を軌道に乗せ始めている俺じゃ、スタートラインに立っただけだ。まだ千弥さんを守りきれない。

力をつけなきゃ。作家として、ゲームシナリオライターとして。

子どもの頃、書くことは居場所作りだった。
実家からの逃避、環境からの逃避。
逃げ腰だったから長続きしなかったんだろう。

でも、今は違う。

今は、千弥さんとの未来のために書いている。

彼女が喜んでくれるから書くし、それによってもたらされる対価で、俺たちは生きていく。
非常に前向きだ。書くことがようやく生活と結びついてきた。

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