ひねくれ作家様の偏愛
編集部に入ると、ごちゃごちゃとした広いフロアは忙しそうな編集者で満ちていた。千弥さんのデスクはフロアの奥。
俺は人の隙間に彼女を探す。

いたいた。
真剣にパソコンと向かい合う千弥さんの姿を見つけ、ふと近付くのをためらう。
仕事に没頭する彼女は、またいっそう綺麗だ。
一般的な美意識とは違う観点で、俺にとっては綺麗。特別な女性だ。

しかし、俺が遠く千弥さんを見惚れるという平和な光景に、ひとりの闖入者が現れた。

飯田毅だ。

横から現れた飯田が千弥さんの両肩にばんと手を置く。
いつものことなのか、慣れた様子で手を振り落とし、不満げに顔を上げる千弥さん。

何事か二人で話しているけれど、遠くて内容まではわからない。
千弥さんの横顔は仕事で張り詰めたものとは違う。
リラックスしたものだ。

何かきっかけがあったようで、二人が笑った。

とても楽しそうに。


それを見た瞬間、俺の心はひゅっと音をたてて固まってしまった。
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