ひねくれ作家様の偏愛
「智くん、お邪魔します。夕食、まだでしょう?色々買ってきちゃった」


千弥さんは無邪気に両手のビニール袋を見せる。
俺がどんな気でいるかなんて知りもしないで。


「今日、会社に忘れもの届けに来てくれたんだよね。ありがとう、すごく助かったよ。どうせなら、編集部に顔出してくれればよかったのに」


「……」


俺は無言でビニール袋を受け取り、中の食品を取り出す。
テイクアウトのクリスピーピザが二枚。ロースとビーフサラダにガス入りのペリエ。
ワインの小瓶もある。

俺と食べようと買ってきてくれたことは嬉しい。だけど、表情が固まってしまう。


「智くん、もしかして仕事中だった?私、邪魔だったかな」


「……そんなことないです」


「出直した方がいい?」


「なんでもないって言ってるでしょう?」


つい声に苛立ちが滲む。
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